地震後に本当に怖い二次災害とは|火災・津波・余震・停電などの備え方7選

巨大な津波が街を襲う写真と「迅速避難」「地震で怖いのは揺れの後の二次被害」の文字。 地震対策×避難行動

地震対策を考えている方の中には、地震の揺れだけに着目して対策をとる方も多いですが、後続的に発生する二次災害にも気を付けなければなりません。

  • 二次災害とは、火災や津波や土砂崩れなど、地震の揺れが終わった後に発生する二次被害の事です。この二次災害は、地震の揺れである一次災害よりも被害を拡大させる場合があります。

二次災害は事前の対策で被害を最小限に抑えることができます。また、一次災害と二次災害は備えるべきポイントが異なります。それぞれの要点を確認して、地震に備えることが必要です。

この記事はこんな方にオススメ

●二次災害について知りたい方
●二次災害の対策について取り組みたい方
●大地震に備えた準備をしたい方

二次災害とは

作業服を着た人が、初期火災に対し、消火器を使って消火活動を行っている様子。

二次災害とは

地震には、一次災害と二次災害があります。一次災害は、地震の揺れによってもたらされる直接的な被害のことです。一方、二次災害は一次災害によって連鎖的に発生する災害のことになります。

例えば、津波や火災や土砂崩れなどの直接的被害から、ライフラインや通信断絶等の生活に関わるインフラへの被害があります。これらの被害は全て地震の揺れによって発生した二次的被害になり、二次災害と呼ばれます。

特徴
火災ガス管の破損や暖房器具の転倒で発生
津波震源地が海底の場合に発生
余震本震の後にプレートのズレにより発生
通信断絶地震発生後のアクセス集中により発生
ライフライン断絶停電・断水・ガス停止が発生
地割れ・液状化地面のひび割れ、水が染み出す現象
がけ崩れ・土砂崩れ地震の揺れや大雨などの水災害で発生

二次災害の特徴としては、一次災害に比べ時間的余裕があり、数時間から数日の猶予期間があります。そのため、正しく事前準備をしておくことで、被害を最小限に防ぐことができます。一方、被害が長期化する傾向もあり、復旧迄、数か月や数年かかるものもあります。

二次災害の被害は時として大きなものになります。1995年の阪神淡路大震災では、火災の発生件数が285件と約7,000棟の建物が被害に遭い、とても大きな影響をもたらしました。また、東日本大震災では津波の死者数として、14,000人以上が報告されています。

一次災害とは

大規模な津波や地震の揺れにより、建物が押し流され、広範囲にわたって甚大な被害(瓦礫)が残された被災地の街並み。

地震による一次災害とは、一番初めに発生する地震の揺れの事です。この地震の揺れを基点として、様々な二次災害が発生していきます。一次災害を予測することは難しいですが、事前にとるべき行動を把握していれば、いざというときにすぐに動くことができます。

  • 地震の揺れの発生前には、緊急地震速報が通知されます。緊急地震速報の通知から、地震が発生するまでに数秒~数十秒の猶予がある場合が多いです。その猶予時間の間に、自分の身を守る行動が取れれば、一次災害の被害から逃れる可能性が高くなります。

以下の資料は、地震の震度と揺れの影響によりどのようなことが発生するかをまとめた資料になります。事前に確認しておきましょう。

気象庁が定める震度階級(震度0から震度7)と、それぞれの震度で発生する揺れの影響と被害の状況をまとめた図。

出典:気象庁

一次災害と二次災害の違い

一次被害と二次被害の違いについてまとめました。これらの情報を確認して、一次災害と二次災害がどのように違うのか把握しましょう。

一次災害二次災害
発生原因プレートの滑り 内部断層の破壊地震の揺れの影響
発生時期直後地震の直後 少し期間を空けた後
被害範囲広範囲 被害の大きい場所は局所局所的 津波は広範囲
復旧期間短期的長期的
情報取得緊急地震速報ニュース・SNS情報
被害内容家具転倒 建物崩落焼死・溺死・圧死・災害関連死
地震対策家具の転倒防止対策 家屋の耐震強化防災知識の獲得 ハザードマップ確認

一次被害と二次被害で必要な対策は違う

一次災害と二次災害は被害の大きさも発生タイミングも違う為、対策として求められることもまた異なります。一次災害は、地震の揺れそのものに対して被害を最小限に抑える努力が必要です。また、二次災害は、地震発生後に発生するリスクに対して備える必要があります。二次災害の対策に必要なのは事前の知識と準備です。備えによって、被害を回避できる点が特徴です。

地震対策
一次災害家具の転倒防止対策
家屋の耐震強化
家屋の免振・制振器具の装着
二次災害ハザードマップの事前確認
避難訓練・避難経路確保
水・食料品の備蓄 各防災グッズの備蓄

二次災害に必要な対策は、水・食料品の備蓄や情報収集に使用するテレビ・スマホ・ラジオを備蓄すること。またそれらを動かすための乾電池やモバイルバッテリー、可能であればポータブル電源を用意しておくと良いでしょう。

また、ハザードマップを事前に確認することで、二次被害の危険を回避することができ、迅速な避難行動をとることができます。

地震の二次災害をまとめて紹介

青い背景の前で笑顔で指を指している若い女性。

地震の二次災害の対策を解説

以下の表は、二次災害を一覧にしたものです。各二次被害の特徴と対策を確認して、いざというときの備えをしましょう。

地震の二次災害は事前の準備が必要不可欠です。また、普段から対策や備えをしていれば、被害を最小限に抑えることが可能になります。

特徴対策
火災ガス管の破損や暖房器具の転倒で発生ガスの元栓を閉める ブレーカーを切る
津波震源地が海底の場合に発生津波避難タワーや高台、避難所へ移動
余震本震の後にプレートのズレにより発生ドアを開ける等、避難経路の確保
通信断絶地震発生後のアクセス集中により発生緊急災害伝言ダイアルの活用
ライフライン断絶停電・断水・ガス停止が発生水・非常食・携帯トイレ・コンロ等の備蓄
地割れ・液状化地面のひび割れ、水が染み出す現象ハザードマップの事前確認 近づかない
がけ崩れ・土砂崩れ地震の揺れや大雨などの水災害で発生ハザードマップの事前確認 近づかない

二次災害は地震の直後に発生するものと、発生から時間がたった後で発生するものと2種類あります。事前に行動を決めておくことで、いざというときに迅速に動けるようになります。

【火災】の対策はブレーカーをOFFに

地震の二次災害により火元が拡大し、炎に包まれて激しく燃えている木造の建物。

火災は地震の二次災害で代表される被害の一つです。大地震では、非常に多くの場所で火災が発生しており、特に震源地に近い揺れの大きい場所で多く発生しています。地震が収まってから1時間以上たっても断続的に発生する場合もあり、被害が長期化することも火災の特徴になります。

1995年の阪神淡路大震災では、震源地が都市部に近かったこともあり、火災により、7,000棟以上の家屋に被害が発生しました。これは、近年で発生した地震の中で一番甚大な被害になります。

火災発生件数被害棟数
阪神淡路大震災285件7574棟
東日本大震災330件不明
熊本地震7件15棟
能登半島地震386件268棟

火災の原因は多岐にわたります。地震の揺れで、暖房器具が破損・転倒して火が燃え移ったり、ガス菅が破損してガスが大量に漏れ出して引火する場合もあります。

  • 通電火災に注意。地震の影響で停電が発生した場合、停電が復旧したときにブレーカーがONの状態だと、地震の影響で破損した電源コードから火花が出て、火災に発展する可能性があります。揺れが落ち着いたら、すぐにブレーカーをOFFにしましょう。

火災の対策として、まず必要なのは家具の転倒防止です。家電製品等の電源コードは家具の転倒によって破損します。背の高いタンスや食器棚等、倒れないように固定しましょう。

また、地震の揺れが収まったら、火元の原因となる、ガスの元栓やブレーカーを切る必要があります。最近では、停電時に自動でブレーカーを落としてくれる感電ブレーカーも販売されていますので、ご検討ください。

【津波】の対策は迅速な避難

海底地震によって発生し、勢いよく岸に向かって押し寄せる巨大な津波の波。

津波は海底を震源地とした場合に発生します。特に、震源地が浅い場合だとより大きな津波が発生する可能性があります。地震の影響で押し上げられた波が海岸に届くまでに拡大し、大きな津波になっていきます。

  • 津波の被害は甚大で、2011年に発生した東日本大震災では、死者の約9割に当たる14,000人以上が被害に遭いました。その時の津波の高さは約40m。10階建てのマンションを飲み込む大きさになります。

津波は車や家を巻き込みながら陸地に流れ込んでいきます。いわゆる津波漂流物は、様々なものを破壊しながら進むため、津波の被害後には大量の瓦礫が発生します。

津波 高さ到達時間
阪神淡路大震災発生なし
東日本大震災43.3m約25分
熊本地震発生なし
能登半島地震5.8m約1分

津波への対策はとにかく早く逃げることです。高台や津波避難タワー等、できるだけ高い位置まで迅速に行動することが必要になります。短時間で家を出るためには、非常用持ち出し袋が必要な為、準備しておきましょう。

  • 避難場所まで最短時間で到着するには、ハザードマップの事前確認が必要不可欠です。平常時から避難時に危険になりそうな場所がないか確認して、安全に避難できるルートを決めておきましょう。

津波の冠水後にも注意が必要です。冠水後は、汚水の影響で大量のウイルスが蔓延し、感染症のリスクが高まります。避難所などの過密な状況の中で感染が拡大する恐れがありますので、マスクの着用や手洗いを欠かさず実施しましょう。

【余震】の対策は本震後の気の緩み

地震の揺れや老朽化により、壁が崩れ、瓦礫が堆積している半壊した建物の様子。

大地震では、地震発生後の数日〜数週間にわたり、本震と同等かそれ以上の強い余震による揺れが複数回発生する可能性があります。2016年の熊本地震では、震度7の本震の二日後に、再び震度7の余震が発生し、家屋が崩れる被害が多発しました。

この教訓から、気象庁は余震への警戒が薄れるのを防ぐため「余震」という言葉を使用しなくなりました。余震の対策で大事なことは、本震が収まっても安心せず、速やかに避難行動を開始することです。

7日間の余震発生回数
(震度4以上のみ)
最大震度
阪神淡路大震災22回震度4
東日本大震災148回震度6強
熊本地震70回震度7
能登半島地震17回震度5強

余震が発生すると、屋根瓦の落下やブロック塀の倒壊、道路のひび割れなど、本震で耐えた建物やインフラに追い打ちをかけ、被害を拡大させます。また、余震は人々の精神面にも影響を及ぼします。本震の大きな揺れと被害で植え付けられた恐怖心が余震によって再燃し、大きな精神的ストレスを与えるのです。

  • 余震の具体的な対策として、もし自宅内で被災した場合は、玄関やリビングのドアを全て開けておき、避難経路を確保しましょう。余震の揺れによりドアやドア枠が変形しても通れる状態を作ることが必要です。

また、屋外にいる場合は、建物やブロック塀の近くは避け、危険のない安全なルートで避難所迄移動しましょう。

【通信断絶】の対策は災害用緊急ダイアル

地震後の停電により、ろうそくの明かりの下でスマートフォンを操作し、情報収集や安否確認を試みる若い夫婦(カップル)。

地震発生直後は、被災者全員が家族への安否確認をする為、通信回線がパンクして繋がらないことが多いです。これは、輻輳と呼ばれる現象で、通常時の何倍もの利用者が一斉に電話を試みる為、通信電波が乱れて繋がらなくなってしまう現象です。

インターネット回線も同様につながりにくくなってしまう為、全ての連絡手段が取れなくなり、安否確認ができない状況になってしまいます。

スマホ通話ができない最大期間インターネットができない最大期間
阪神淡路大震災不明不明
東日本大震災約30日約30日
熊本地震約1日約1日
能登半島地震約30日約30日

安否確認ができないと家族や・友達の状況を考えて不安になってしまい、その後の避難行動に影響を与えます。まずは一旦落ち着いて、冷静に行動することが必要になります。

  • 緊急災害用伝言ダイアルは、通話やインターネットができない状況でも、安否確認ができる防災ツールです。
  • 使い方は簡単、電話で「171」を掛けて頂き、音声ガイダンスに従って番号を押すと、相手の電話番号へメッセージを録音することができます。同じ手順で聞くこともできますので、緊急時でも連絡を取り合うことができます。

インターネットがつながらない場合は、ファイブゼロジャパン(00000JAPAN)というWiFiを使うことができます。ファイブゼロジャパンは緊急時のみ使用できるWiFiで、地震後でも安定してインターネットを利用することができます。

  • ファイブゼロジャパンは、パスワードを必要としない為、被災地内であれば、誰でも使用することができます。SNSやLINE等、情報を共有できるツールが使用できるため、安否確認に困ることはなくなるでしょう。

日ごろから安否確認の方法を家族間で共有しておくことも重要になります。安否確認が必要になった際に、すぐにそのツールを確認することができるため、早めの意思疎通ができるようになるでしょう。また、待ち合わせ場所も決めておくことで実際に会うこともできるでしょう。

【ライフライン断絶】の対策は普段からの備蓄

停電時、懐中電灯で分電盤を照らしながら手がブレーカーを操作している様子。通電火災を防ぐための対策。

大地震の場合、ライフラインの断絶が発生し、電気・ガス・水道がストップします。これらのライフラインが使えなくなると、日常生活に多大なる影響を与えます。震源地によって、ライフラインの復旧が長期化する可能性もありますので、防災グッズの備蓄が必要不可欠になります。

停電 最大期間断水 最大期間ガス停止 最大期間
阪神淡路大震災約7日約90日約90日
東日本大震災約10日約30日約85日
熊本地震約10日継続中数か月
能登半島地震約7日約90日約30日

停電対策としては、懐中電灯や防災用のランタンを準備することです。照明があれば、本震後の被害状況の確認もスムーズに行えます。また、これらを動かすための乾電池やモバイルバッテリーの準備も必要です。スマホや防災ラジオ等、情報収集の機器を充電するときにも使用できます。

  • 断水対策としては、水の備蓄を実施しましょう。一人一日3Lとして、7週間分の備蓄が必要になります。また、忘れがちなのがトイレです。断水するとトイレが使用できなくなりますので、携帯トイレなどの防災グッズが必要になります。

ガス停止の対策はカセットコンロ及びカセットガスの備蓄になります。カセットガスは、1週間に6本が目安になります。特に冬は暖を取るためにも使用しますので、多めに備蓄するようにしましょう。

【地割れ・液状化】の対策は近づかない

大規模な地震の揺れにより、アスファルトの道路が深くひび割れて大きく損壊した様子。

地割れとは、地震の揺れの影響で地面にヒビが入ったり割れたりする現象です。干拓地や埋め立て地等、河川沿いの低地や地盤が弱い場所で発生しやすいのが特徴です。足が挟まったり、車で通れなかったり、避難の妨げになるので、注意が必要です。

  • 同じような場所で発生しやすいのが、液状化になります。液状化現象とは、地震の揺れの影響で地下水の高い地面から、砂や水が染み出す現象です。この液状化の影響で、上下水道やガス菅の破損も引き起こされるため、ライフラインへの影響も懸念されています。

また、液状化現象は震源地の近くで発生するとは限りません。2011年東日本大震災の際、三陸沖で起きた地震の影響で、東京湾周辺に液状化が発生しました。重いマンホールが持ち上がるほどに砂や水が噴出したり、家屋や電信柱などの傾斜・沈下も発生し、避難行動に大きな影響を与える結果となりました。

液状化による家屋全半壊の
阪神淡路大震災1,400棟
東日本大震災30,000棟
熊本地震数十棟
能登半島地震2,000棟

地割れや液状化の対策としては、近づかないこと。また、ハザードマップの事前確認が大事になります。事前に地割れや液状化の発生する恐れのある場所を把握できれば、避難行動時に避けて通ることができます。

【がけ崩れ・土砂災害】の対策はハザードマップを確認

地震や豪雨の影響で発生したがけ崩れ(土砂崩れ)により、土砂が道路に流れ込み、通行が遮断された状況。

がけ崩れや土砂災害は、地震の揺れをきっかけとして発生します。大きな岩や家屋を巻き込む為、非常に大きな土砂となって人々を襲います。地震の直後に発生しなかった場合でも、その後の大雨や台風で地盤が緩んだときに発生する可能性もあります。そのため、気象庁は地震の被災地域に対して、大雨警報や注意報を通常の基準よりも低めに設定しています。

がけ崩れ発生件数土砂災害発生件数
阪神淡路大震災不明不明
東日本大震災2,150件2,300件
熊本地震4,300件4,600件
能登半島地震不明不明

対策としては、ハザードマップで自分の住んでいる地域に土砂崩れの危険があるのかどうかを確認することです。土砂災害警戒区域を事前に調べてリスク軽減することができます。近くの避難所や、通勤・通学などの道も、併せて確認しましょう。また、土砂災害の発生には、天候が大きく関係しますので、発生の恐れがある場合は、天気予報を確認するようにしましょう。

災害関連死とは

避難所の体育館などに設置された、アルミシートと毛布、枕が用意された簡易ベッド。

災害関連死とは

二次災害とは少し異なりますが、一次災害以外に死者が出る被害として無視できないのは、災害関連死です。災害関連死とは、災害による直接的な被害ではなく、避難行動時に起きる身体の不調の事です。避難時の環境により水分不足や栄養不足、また、精神的な不安やストレス等、様々な原因があり、最悪の場合、死に至る可能性のある非常に恐ろしいものになります。

災害関連死は地震の死者数の中でも、大きな割合を占めています。軽視することができない被害である一方で、対策を把握していれば防ぐことができます。

災害関連死の死者数
阪神淡路大震災919人
東日本大震災3,808人
熊本地震218人
能登半島地震174人

エコノミークラス症候群とは

災害関連死の中で一番多い病気でエコノミークラス症候群というものがあります。エコノミークラス症候群とは、同じ態勢を長時間繰り返すことで発生する身体の不調になります。避難所生活や車中泊が長期化すると、座ったまま体が固定されるため、血管が圧迫されて血栓ができます。その血栓が肺に入り、呼吸困難や心不全といった不調をきたし、最悪の場合死に至る可能性があります。

エコノミークラス症候群の症状は以下になります。このような症状が現れた場合は、必ず医療機関へ行くようにしましょう。

  ふくらはぎや太ももが腫れる 

  足に痛みが現れる、全体的に重く感じる

  血流が悪くなり、皮膚の色が紫に変色する

  能呼吸困難や息切れ、胸の痛みが発生する

  意識レベルの低下、失神する

エコノミークラス症候群を回避するためには、30分~1時間に一回、散歩やストレッチをすること。また、こまめな水分補給をすることが必要です。

過去の大規模地震で発生した二次災害の被害とは

大規模な津波や地震の揺れにより、建物が押し流され、広範囲にわたって甚大な被害(瓦礫)が残された被災地の街並み。

阪神・淡路大震災

死者数割合
火災550人8.5%
津波0人0.0%
全体6,434人100.0%

阪神淡路大震災は1995年に発生した震度7の大地震です。震源地が淡路島の北東で、主に大阪府と兵庫県が大きく被害を受け、6,000人以上の死者を出す結果となりました。二次災害の被害としては、震源地が内陸に近い位置だったため、津波の被害はありませんでしたが、火災による死者が他の地震に比べて多いです。

大阪府や兵庫県等、人口が多い都市になると建物が密集しており、火災が発生した場合に火が隣の建物に燃え移って拡大していきます。また、インフラの被害が大きく、警察や消防が、火災現場迄到着するのに時間がかかり、被害が拡大する要因の一つになりました。

被害戸数完全復旧日数
停電260万戸約7日
断水130万戸約90日
ガス停止86万戸約90日

阪神淡路大震災はライフラインにも大きな被害を与えました。停電は260万戸、断水は130万戸、ガスの停止は86万戸が被害をこうむりました。また、復旧にもかなりの期間を要しており、断水とガスの復旧に約90日間もかかりました。

原因としては、道路や橋等のインフラへの被害が大きく、水道管やガス管の修繕復旧作業に遅れが生じたためと報告されています。また、避難者や帰宅困難者が自動車による移動手段を取ったことにより、各地で大きな渋滞が発生して修繕に時間がかかる結果となりました。

このことから、避難や帰宅の際は必ず徒歩で移動することが強く呼びかけられるようになりました。

東日本大震災

死者数割合
火災145人0.9%
津波14,308人90.6%
全体15,815人100.0%

東日本大震災は2011年に発生しました。東日本大震災は、日本の歴史上一番被害を出した大地震と言われています。震度7という大きな揺れに加え、その後に起こった津波の影響で、14,000人以上の死者を出す結果となりました。

また、福島第一原発が破損して、放射能が漏れだした為、自宅に帰れない状況が続きました。被災者は長期の避難所生活を余儀なくされ、その影響で災害関連死の死者を多数出してしまいました。

被害戸数完全復旧日数
停電855万戸約10日
断水257万戸約30日
ガス停止212万戸約85日

東日本大震災では、ライフラインに大きな被害を与えました。その大きな要因はやはり津波になります。発電所や浄水場等の施設は津波によって破壊され、地中の水道管や配管は引きちぎられて地上に出てくるような状況でした。

ライフラインの復旧に関しても、津波被害の復旧と同時並行でしなければならない為、非常に長期化しています。特にガスの復旧には時間を要しました。ガス再開時には、各ご自宅に一軒づつ、直接訪問が必要になりますが、その家自体が津波に流されてしまったり、家主が避難所でいて留守にしていたことが、復旧が遅れる原因になっています。

熊本地震

死者数割合
火災6人2.2%
津波0人0.0%
全体276人100.0%

2016年熊本県熊本地方で震度7の大地震が発生しました。これにより、多くの被害者を出しましたが、その地震被害を特に大きくしたのは、本震から2日後に発生した震度7の余震になります。これまでは、余震は本震よりも震度が小さくなると考えられていましたが、熊本地震では、本震と同程度の大きな揺れが発生したことにより、余震に対する意識が一気に変化しました。

本震を耐え抜いて少し安心していたところにこの余震だったため、多くの被災者が混乱状態に陥りました。また、本震をぎりぎり耐えていた住宅や家屋は、この余震が追い打ちとなり、全体で8,700棟の住宅倒壊が発生しました。

被害戸数完全復旧日数
停電47万戸約7日
断水43万戸約90日
ガス停止10.5万戸約30日

ライフラインの復旧にも時間を要しています。特に断水に関しては、復旧が長期化しており、地中の配管の破損が多かったことが挙げられます。その原因の一つとして、考えられているのが液状化です。液状化は地面から砂や水が噴き出してくる現象ですが、その影響で地盤が緩み、地盤沈下の影響で配管関係が引きちぎれる現象が多発し、修繕に期間を要する事態となりました。

能登半島地震

死者数割合
火災28人11.6%
津波0人0.0%
全体241人100.0%

2024年に能登半島で震度7の大規模地震が発生しました。震源地は能登半島沖の海底になります。能登半島に非常に近く、震源の深さも16kmと浅かったことから非常に大きな被害となりました。二次災害の被害としては、津波の被害がなかった一方で、火災が多く発生しております。全体の死者からの割合で言うと11.6%と非常に多い状況でした。

被害戸数完全復旧日数
停電4.5万戸約10日
断水11.9万戸復旧中
ガス停止2.2万戸数か月

ライフラインの断絶も発生しており、水道に関しては今もなお、断水が解消されていない状況です。これは、地震の揺れにより、上水道の破損が多数発生しており、その修繕作業に時間がかかっている状況となります。また、ガスの停止に関しても、詳細は記載されておりませんが、数か月かかったという報告が残されています。

今後発生する大地震の被害予想は?

地震後の不安や災害対策について考え込んでいる女性の表情。

南海トラフ地震

死者数(想定)割合(想定)
火災21,000人7.0%
津波215,000人72.1%
全体298,000人100.0%

南海トラフ地震とは、静岡から九州地方にかけて連なる、南海トラフというプレートの境界線がずれることによって発生する大規模地震になります。この地震は被害箇所が都府県30以上にもなり、日本全土を巻き込んだ未曽有の危機に発展します。

最も大きな二次災害としては、津波です。被害地域が海岸沿いとなりますので、地震によって隆起された海底に押し上げられ、大きな津波が発生します。津波の大きさは数十メートルになることが予想され、地震発生から数分で到達する見込みとなっております。

被害戸数(想定)完全復旧日数(想定)
停電2,200万戸数週間
断水3,570万戸数か月
ガス停止210万戸不明

津波によりライフラインに関しても大きな被害が発生します。停電は2,200万戸、断水は3,570万戸、ガスは210戸で停止する想定になります。また、被害地域が大きいので、救助体制や支援物資の慢性的な不足に陥ります。インフラも大きな被害を受けるため、各地域への支援物資の送付も時間がかかるでしょう。

これらの状況から、長期的なライフラインの断絶が発生する恐れがありますので、家庭内の備蓄に関しては、十分な日数を耐えられる量を備えておくべきです。

首都直下型地震

死者数(想定)割合(想定)
火災16,000人69.6%
津波100人0.4%
全体23,000人100.0%

首都直下型地震は主に東京近辺中心に1都3県に被害が及ぶ大型の地震になります。震源地は東京湾の北部を想定しており、震源深さは18kmと非常に浅い位置での地震発生を想定しております。

二次被害の特徴的な部分として、火災被害が挙げられます。人口密度が高い都市部になりますので、住宅が密集しており、いたるところで火災の発生が想定されています。また、その火災が近隣の住宅へと燃え移ることを想定しており、インフラの断絶で消防の救助や消化活動に遅れが発生し、火災による多くの死者が出るように予想されています。

被害戸数(想定)完全復旧日数(想定)
停電300万戸約7日
断水470万戸約30日
ガス停止270万戸約55日

ライフラインでは、特に水道に関して被害が大きくなります。理由の一つとして、大きな火災が断続的かつ広範囲に発生し、その消火活動に大量の水を使用するためです。地震の被害で水道管が劣化しているところに、一気に水を使用すると水道管に負担がかかり、さらなる破損の原因になります。

また、もう一つの理由として、液状化が関係します。都心は埋立地など、地盤の緩い箇所も多々あり、そのような場所では液状化現象が発生しやすいのですが、その液状化現象により、地中に埋まっている水道やガスの配管が引きちぎられる現象が様々な場所で発生します。このような状況から復旧作業にも時間がかかることが想定されているのです。

地震に備えて今からやるべきこととは

カセットコンロ、非常食、ポータブルトイレなど、地震や災害時に必要な様々な防災グッズと非常用持ち出し袋。

今からできる二次災害への対策として、簡単にできるものもありますので、ぜひ今から取り組んでいただければと思います。

転倒防止対策

地震の揺れによる家具の転倒を防ぐために、棚と壁の間に取り付けられた家具転倒防止器具。

転倒防止対策は、簡単にできて、なおかつ二次災害の「余震」「火災」の防止に効果を発揮します。家具を壁と固定することによって、本震や余震の揺れによる家具の転倒から身を守ることができます。また、家具の転倒が引き起こす、家電製品などの電源コード破損を防ぐことができるため、ショートによる火災の発生を防ぐことができます

まずは、背の高いタンスや食器棚を中心に対策を始めましょう。家具の天井とお部屋の天井を突っ張って固定する、転倒防止突っ張りポールや家具の底の前面に挟み込む、転倒防止プレート等、数分で設置できるものが多いので、今すぐにでも簡単に始められます。

水・食料不足対策

災害時に備えて準備された、カップ麺やビスケットなどの非常食と「非常用」と書かれた布。

水・非常食の備蓄は、防災対策の基本となります。おすすめの備蓄方法としては、普段から食べているもので、賞味期限の長いものを買いだめしておく、ローリングストック法です。メリットとしては、普段から頻繁に食べているものを備蓄する為、賞味期限をこまめに確認でき、切れる心配がありません。また、いざというときに食べ慣れた食事をとることができますので、安心感を得られます。

非常持ち出し袋の準備

防災用のヘルメットをかぶり、非常用持ち出し袋を背負って避難しようとしている幼い男の子。

非常用持ち出し袋は、二次災害の「火災」「余震」「津波」対策として非常に有効です。これらの二次災害の共通点は、迅速な避難が必要な点です。家が火災で燃えていたり、津波が迫っている状況では、荷物をまとめている時間はありません。非常用持ち出し袋があれば、何も考えずにすぐに避難行動へ移すことができます。

安否確認

スマートフォンを中心に、SNSの「いいね」や時計、カレンダーなどのアプリや通信を連想させる3Dイラスト。

安否確認の方法を家族間で共有することは、防災対策として非常に重要なことです。大事な人の安否がわからないまま避難行動をすると、適切な行動がとれなくなったり、精神的に消耗してしまう恐れがあります。「災害関連死」を回避するためにも、家族間であらかじめ安否確認の方法や集合場所を共有しておきましょう。

  災害用伝言ダイアル(171)

  災害用伝言版

  各携帯キャリアの伝言板

  SNS・LINE等の掲示版

  00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)

安否確認で一番使用される方法は災害用伝言ダイアルです。電話番号171を掛けて、音声ガイダンスに従ってメッセージを録音したり、録音内容を聞いたりすることができます。災害用伝言ダイアルは、通信回線がパンクした場合でも使用できるため、安否確認時に大変重宝します。

また、インターネットに繋がらない場合には、緊急時のみ使用できるWIFI、ファイブゼロジャパン(00000JAPAN)を活用しましょう。ファイブゼロジャパンは無料で誰でも使用でき、通常回線よりも強い為、インターネットがつながらない状況化でも使用することができます。インターネットが使用できれば、ネットの掲示板やSNSを活用して安否確認ができるでしょう。

ハザードマップを活用して迅速な避難計画を

地図上に赤色のピンで現在地と目的地(避難場所)が示され、避難経路を確認している様子。

二次災害を避けるにはハザードマップの確認が必要

屋外で発生する二次災害を避けるためには、ハザードマップの事前確認が必要不可欠です。例えば、液状化や土砂災害等、避難するうえで回避したい危険な場所はハザードマップで事前に確認ができます。また、津波が迫っているような、迅速な避難行動が求められる場合、ハザードマップを確認しないと、最適なルートを通ることができず、避難に時間がかかってしまいます。

また、平常時にハザードマップを確認したら、実際に通ってみることも大切です。目的地となる避難所まで、実際に歩くことで、ハザードマップに記載のない危険に気づくかもしれません。避難訓練など、定期的に避難ルートを確認する方が良いでしょう。

ハザードマップは全部で7種類

  洪水ハザードマップ

  内水ハザードマップ

  ため池ハザードマップ

  高潮ハザードマップ

  津波ハザードマップ

  土砂災害ハザードマップ

  火山ハザードマップ

ハザードマップは全部で7種類です。これは国土交通省が公開しているハザードマップで、全国を対象に各種類別に用意されています。例えば、津波であれば、どの地域がどれぐらい浸水するのかが一目で分かるようになっており、屋外避難が必要かどうかの判断に役立ちます。

ハザードマップは、各地方自治体も公開しています。対象範囲が限られる一方で、全国版よりも詳細な情報を確認することができます。例えば、避難所の場所やその避難場所へ到達するための最短ルートなど、より現場に即した情報を手に入れることができます。

まとめ

明るい日差しの下、屋外で微笑む若い女性。

今回は二次災害について解説いたしました。地震は一次災害と二次災害があり、事前の対策となると、本震である一次災害の方へ目がいきがちですが、二飛災害に関しても軽視することはできません。本震を予測することは難しいですが、二次災害はある程度予測が可能であり、事前の対策で減災や抑止することも可能です。地震対策を検討されている方は、ぜひ二次災害にも気を配ってみてはいかがでしょうか。

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